472 「キリスト教は古代ヨーロッパのwww.」

「世界史の新常識」(文藝春秋編、文春新書、2019年)

 

 共通一次試験は倫理・社会と政治・経済を選択した。世界史は授業は受けたが、ほとんど身につけていない。そんな人間にも世界史を学びたい年齢が来た。この手の本にも手が伸びる。

 

 同僚の世界史の先生に訊いたら、なかなか豪華な執筆陣らしい。でも、以下の引用にいちいち執筆者名は記さない。

 

 「ナチズムの強制収容所スターリニズムラーゲリは、二十世紀が作り出した、絶対悪の象徴であるが、悪の性格は大きく異なる。ヒトラーは敵を殺したが、スターリンは仲間を殺した」(p.229)。

 

 これは、国外植民地と国内植民地を想起させます。近代日本は東アジアに植民地を求め、沖縄、北海道、原発各地などをいまなお国内植民地としたままでした。

 「ヒトラーが行ったのは、積極的な経済政策に、ナショナリズムの高揚を加えた国家主義ポピュリズムだったと言える」(p.233)。

 

 そういう国は、たとえば、北太平洋の東西に存在します。

 

 「アメリカの史書にもアメリカの歴史家がそうであって欲しい(欲しかった)母国のありようが書かれているのである」(p.235)。「アメリカの真の歴史を振り返れば、民主党が人種差別政党であることは歴然としている」(p.248)。

 これはわたしが非常識でした。少なくとも非新常識でした。民主党は黒人隔離の州法をいくつも作っていたそうです。ぎゃくに、リンカーン共和党でした。

 「ローマ帝国キリスト教を国教としたのもこの情報パイプを失ったことに大いに関係があると思います」(p.287)。

 帝国の道路網は情報網でもありましたが、他民族の侵入によってネットは引き裂かれてしまいました。そこで、ローマが目を付けたのがキリスト教会です。

 

 「当時、キリスト教会は、都市部の大教会をハブにして、地方の小教会を結ぶネットワークを構築していました」(同)。

 

 ミラノ司教アンブロシウスがテオドシウス帝に、キリスト教を庇護すれば、インターネットを手にしたのも同然ですよ、と唆したのではないか、と執筆者は想像力をゆたかにしています。

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