日本住民の生活の安全を守るには、戦闘機一機の購入費用を、農業支援に回したほうがよい、と著者は言う。 住民が安全な食料を口にするためには、農作物は自由市場の商品ではだめだ。消費者に安全な食料がそんなに高くない価格で届き、かつ、生産者の収入が保…
哲学とは何でしょうか。と、哲学の入門書などにはいろいろ書いてありますが、最近、淡野安太郎「哲学思想史」を読み始め、さらに、「100分de 名著」のこの巻の最初の方にある「西洋哲学の歴史」という項目を読んで思ったことは、ぼくにとって、哲学とは、哲…
著者は、地球の生態系危機を警告する一方で、それを克服する希望も示す。 地球の水、空気、土は、ひたすら「成長」を目指す産業、企業によって、収奪され、汚染されている。これはかなり前からすでに言われてきた。しかし、かつては公害はある意味地域的なも…
若松さんは、大学卒業のころだろうか、神経を病んだ、と言う。 「原因は実社会で働くことへの怖れもあったのだろうが、それは、ある意味で表層の理由に過ぎない。逃げようとしていたのは、自分自身からだった。ただ、そのことが実感できるまで、短くない時間…
この新書シリーズから著者が出しているもう一冊の本を読んだ後のノートを公開したところ、「あ、宇根さんだ」というコメントをいただきました。何冊も本を出しておられるし、「宇根豊さんってこの世界では知られた人なのだな」くらいにしか思わなかったので…
幕末までの農村社会には、自治と自由があったが、それ以降、貧しくされてきた、と著者は言う。 ひとつは、地租改正による。穫れ高に関係なく地価に基づいて金で納税しなくてはならなくなった。また、入会地、草刈場のようにもともと共有地であったものが官有…
キリスト教の牧師を30年近くやっているが、ぼくの話は「証し」ぽくない。難解な理屈っぽいことは語らないが、「ぼくはこう信じている」というよりは「聖書によれば、神はぼくたちにこうしてくださる」ということを中心に述べる。 具体的には、神は無条件でぼ…
「農の神学」というZOOMミーティングを、広島の山間部に移住した友人の牧師らと月一くらいで細々とやっている。 これに刺激され、またメンバーのひとりに紹介され、今かなり売れているらしい「レジリエンスの時代 再野生化する地球で、人類が生き抜くための…
「資本主義の次に来る世界」(ジェイソン・ヒッケル、2023年、東洋経済新報社) 生命圏としての地球はまもなく破壊され尽くされます。その原因は成長を追求し続ける資本主義産業社会とそれを支える政治にあります。格差を今よりずっと縮める政治ぬきに地球の…
ソウルメイトから紹介されて、ソクヨミしました。対談とか講演とかだし、東京工業大学関係とは言え、論文集ではなく、MAGAZINEなので、とても読みやすかったです。 最近読んだ「資本主義の次に来る世界」とか「レジリエンスの時代」とか「旧約聖書と環境倫理…
若松英輔さんの詩は読みやすい。ぼくは読めていないのかもしれないが、読んでいるようにも思う。 若松さんが紹介するリルケの詩はぼくには読めない。むずかしい。でも、あそこに書かれていることは若松さんがこの詩集で書いていることと同じことなのかもしれ…
「世界史」をふりかえると、人間の口に入る「食べもの」は、支配者の都合によるものだったことをこの本は教えてくれます。 小麦、大麦、コメ、トウモロコシが主食とされたのは、長期間保存、貯蔵、輸送ができたので、支配者の富の蓄積に好都合でした。地中に…
「私は「負うた子に教えられ」を「大蛸に教えられ」と誤解して、どんな蛸かと思っていた時期もあった」(p.153)などというとぼけた一節もあるから、やはり「雑記」でもあるのかもしれない。あるいは、著者にとっては何かを論説しているつもりはないのかも知れ…
子どもたちの前での説教が苦手で(むろん、大人たちの前でもそうですが)、この本を読んでみることにしました。すると、子ども説教のみならず、大人説教の参考になることがたくさん書かれていましたので、以下に箇条書きします。 〇「物語る」ことは、原稿や…
誤読ノート773 「旧約聖書には人間と神以外の人格が存在する」 「旧約聖書と環境倫理: 人格としての自然世界」(マリ・ヨアスタッド (著)、魯 恩碩 (翻訳)、教文館、2023年) 旧約聖書にみられる以下のような記述は、擬人法ではない、と著者は言います。 「…
これの少し前に「食べものから学ぶ世界史」というのも出ていますから、高校の科目を題名に入れてやろうというシリーズなのでしょうね。つぎは、「食べものから学ぶ日本史」「食べものから学ぶ政治経済」「食べものから学ぶ倫理社会」「食べものから学ぶ地理…
「農村伝道神学校」というところで、ぼくは学者でもないのに、非常勤講師をさせていただいています。担当クラスで学ぶことは、むろん、農にかかわるものではなく、キリスト教の基本的な信仰内容です。 それから、広島の山間部に移住して農にとりくんでいる友…
三位一体論(神は唯一であるが父、御子、聖霊という三つの位格がある)やキリスト論(キリストの神性と人性)が築き上げられている過程に関わることがらが述べられていますから、書名に「キリスト教」とか「キリスト教の生い立ち」という言葉がまったくの偽…
70代もできれば元気に過ごすためには、今から健康にと、15キロのダイエットを達成し、週二日は40分、それ以外にもなるべく歩くことを心がけてきましたが、この冬、血圧が高いのはちょっと残念。 同業の、ひとまわりくらいか、先輩方はどうしておられるのでし…
一番目。バルトは神学概念の定義に長けている。定義はむろん言葉でなされるが、その言葉には一定のリズムがある。あるいは、異なる二つのことの重ね合わせ、並列などの表現が用いられる。 たとえば・・・ 「聖書神学は教会の宣教の基礎づけを、実践神学はそ…
イエス・キリストがユダヤ、ガリラヤで活動したのが紀元(AD)30年くらいまでですが、その後、キリスト教会が生まれ、成長します。信者は、紀元40年頃には1000人程度だったのが、紀元350年頃にはローマ帝国の人口の過半数である3400万人に達した、とする説が…
著者と同じ時期に同じ高校で非常勤講師として勤めていたことがあります。話したことはありませんが。著書は1~2冊読んだことはあります。テレビではよくお見掛けします。 この高校での先輩教員が、こんな本があるよ、と紹介してくれたので、読んでみることに…
ぼくは子どものころ高等農林出の親父の口から南方熊楠は大人物だと聞いたことはありましたが、どういう人か本などで知ろうとしたことはありませんでした。 NHKの朝ドラ「らんまん」は植物学者牧野富太郎の生涯をモデルにしていましたが、これにこの粘菌学者…
著者は小説の形で、パウロやイエスについての考えを伝えようとしていますが、ストーリー性に富んでいるわけではありません。 紀元60年過ぎ、ローマ在住のエラスムスというローマ人(?)はパウロの弁護人になるように持ち掛けられます。彼にはハンナと言うユ…
学生に大好評だった一般教養科目「キリスト教学」の講義を下敷きに、栗林輝夫さんが旧約聖書の各書物のフレーズが出てくる映画と聖書を解説した一冊。 「屋根の上のバイオリン弾き」「ジュラシックパーク」「ドラえもん」「ふしぎの海のナディア」「タワーリ…
イエス・キリストの十字架の死によって、人間の罪が贖われた、罪の奴隷となっている人間が買い戻された、人間の罪が赦された。 キリスト教の信仰はこのような「贖罪信仰」を中心にする、と一般には思われているようですが、著者は、キリスト教の最初からこの…
この本では、非正規雇用労働、五輪の暴力、電力、食、気候不正義、外国人労働者、野宿者差別、水俣病、水平社、被災地、アイヌ・・・このような「社会問題=社会ゆえに生じそれゆえに社会の枠組みで考えなければならない問題」が挙げられています。 ぼくは、…
タイトルから、キリスト教のイロハの案内かと思われるかもしれません。たしかに、「第1章 新約聖書とは何か」「第2章 イエス」「第3章 パウロ」などの章立ては基礎的な事柄に思われますが、「本の素材」「本の形態」「本の製作と流通」を述べる「第8章 新約…
主人公のモデルは存在せず、すべて創作です、と著者は明言していますが、著者が認めるように、小説の舞台のひとつである同志社大学神学部の、わたしも聞いたことのある、N教授の小話をネタにしたエピソードが出てくることもあり、ある書評では、モデルとして…
世界の環境をこれ以上悪化させず、自然資源を枯渇させず、世界の生物(人間を含む)を絶滅させないためにはどうしたらいいのでしょうか。 マルクスにはそのような思想がなかったので参考にならない、という声が支配的でしたが、「資本論」だけでなく、彼の残し…